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(ドイツ) 時短(週10時間)でも正規雇用

2021年1月31日

高齢化社会で、日本の社会保険システムの破綻がだんだん現実味を帯びてきている。今まで非正規雇用とされている人たちのため、そして、正社員でも今後、介護のためにフルタイム勤務ができなくなるケースのためにも、日本での社会保険適用の拡大は、待ったなしだと思う。出口治明氏も以前から言っている。 

時短勤務というと、日本では、即、パートタイマー、つまり社会保険のない非正規雇用と思われるが、ドイツは違う。勤務がフルタイムの半分たとえば週20時間だと、給料も、有給休暇も比例して半分。有給は、ドイツ標準の6週間はそのまま。週の勤務時間に比例して、休暇も実質半分になるだけ。年金、健康保険、失業、介護の各種保険は労使折半。会社の規模にかかわらず、である。 

実は私自身、都合から、時短のフリーランスとして働いているが、週10時間の正社員のオファーを会計事務所から(大手も小規模も)複数受けた。(個人的な事情から、フリーランスのままとしている。) 

 ドイツでは、従業員側で社会保険料を払わなくてもいいのは、月450€(現在のレートで約5,6万円)まで。法定最低賃金が2021年1月では時給9.50€、7月からは9.60€(約1100円)なので、一か月の労働時間が約47時間を越えれば、労使とも社会保険料を払う必要があり、正規雇用と同じ形になる。しかも、月450ユーロ以下でも、会社側だけで社会保険料を負担する必要がある。 

 日本では週30時間以上の勤務時間でないと社会保険の加入はできなかったが、2016年10月にやっと、従業員501人以上の事業所について、週20時間以上の勤務及び月額8.8万円等と、適用範囲が拡大された。 

フルタイムでないと正規でない、という考え方がおかしいと思う。労働時間に比例して給与や休暇を決めれば、正規も非正規と区別する意味もなくなる。子育てをする夫婦のみならず、今後は、介護でフルタイム勤務が難しくなるケースが増える。介護の期間は読めないけれど、まずは、フルタイム勤務でなくても、退職せずにすみ、社会保険加入を続ける体制が必要になるのは自明だ。ドイツでは、家族の介護で、いろいろな形で(緊急の10日の介護休暇、事前通知する6か月までの介護休暇、最低週15時間の2年までの時短など)勤務時間を減らしながら雇用を維持することが可能となっている。ドイツの移民政策に対する意見は様々だが、少なくとも人口ピラミッドは若い層が増えており、社会保険の破綻は日本ほど切実ではないのに、すでに対応している。 (会員寄稿文)

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